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【プレイ日記】銀色、遥か【tone work's】

 tone work'sの銀色、遥かをクリアしたのでその感想を書いていきます。

toneworks.product.co.jp

 

感想(ネタバレなし)

 そもそも、この銀はるとの出会いは、YouTubeのミックスリストで、『銀色、遥か』と『夢の季節へ』が流れてきて、ボーカルアルバムを買うくらいハマって、この曲が使われているシナリオってどんなものかと気になったのがきっかけでした。ボーカル曲は先に挙げた2曲と各ヒロイン2曲ずつの計12曲もあり、どれもとてもいい曲でした。特に『夢の季節へ』と『ヒマワリ』は間違いなく名曲なので、これだけでも聴いてほしいです。ボーカル曲に限らず、BGMもシナリオにあった優しい曲調で聴き心地のいい曲がたくさんありました。

 シナリオに関しては、中学編、学園編、アフター編の3部構成となっており、共通部分は中学編の序盤のみです。ルート分岐してからは全く別のシナリオとなっており、非常にボリュームがあります。また、いずれのルートも選択肢はほとんどなく、Bad Endもありません。物語全体を通して優しさにあふれたものとなっています。ただ、大きな起伏やSFチックな不思議なことはないため、人によっては退屈と思えるかもしれませんが、純愛モノとしての完成度はかなり高いと思います。とにかく、幾度も季節を重ねていく中でゆっくりとヒロインたちと過ごしていく時間、そしてその先の結婚までの軌跡を楽しむものだと思います。この冗長とも思える退屈な日常の一幕もこの月日の積み重ねの一つでこれこそが銀はるの良かったところです。いわゆる泣きゲーですと、無駄なシナリオは嫌厭されがちな印象ですが、ヒロインたちとの時間の積み重ねが重要な銀はるでは切っても切り離せない根幹をなす部分でした。

 攻略順に関しては好きなヒロインからでいいと思うのですが、瑞羽ルートは最後がいいかなって思います。瑞羽ルートは特に完成度が高く、タイトルの『銀色、遥か』に最も合っているヒロインだと思うので、トリを飾るのにいいかなって思います。

 

 

 ここからはネタバレも含みつつ書いていきますのでご注意を。銀はるで致命的なネタバレはないような気はしますが一応ご注意を

 

シナリオ

 まずはヒロインについて攻略順に書いていきます。

ベスリー

 銀はるは曲に加え、ベスリーのビジュアルに惹かれたから買ったまであるので、真っ先に攻略しました。

 中学編はベスリーが留学生ということで、中学の卒業前には帰国してしまうこともあり、お互いに一歩踏み出せない距離感がもどかしいけど、それがまたよかったです。

 学園編ではべスリーが再留学で幌路に帰ってきて、主人公の家にホームステイすることになりました。留学生キャラならではの自然なひとつ屋根の下状態となりましたね笑。べスリーとみんなの思い出を作るため、雪まつりに参加し、紆余曲折ありながら『SNOW FESTIVAL』をみんなの足跡で作り上げたところは印象的でした。雪の結晶もみんなで作り上げた足跡の『SNOW FESTIVAL』も一つとして同じものはないく、それがみんなとの絆の形っていう発想がめっちゃ好きです。そして、これがべスリーのお母さんが完成させることのできなかった『SNOW FESTIVAL』となるのもまた。中学編の雪兎が描いた雪だるま、ベスリーのお母さんの『SNOW FESTIVAL』、ワンルーム学級の絆と色んな要素が織り込まれていて最高ですね。

 アフター編では、カナダ留学、そして改めて幌呂での新生活がありました。留学では新たな仲間たちと出会いました。雪兎の男友達がようやくここで登場でした笑。日本に戻ってからは、ベスリーと結婚してそこからべスリーのイラストレーターとしての夢を二人三脚で追っていきました。国際結婚っていろいろと大変なんだなあ……。そして、最後は結婚式を挙げてエンディングとなりました。エンディングの演出は可愛らしい絵でベスリーとだんだん広がっていく人の輪が表現されていました。歌詞と演出がとてもマッチしており、最後まで楽しめました。

 

雪月

 佐咲紗花が好きなので、雪月を次に攻略しました。学園編のラストは銀はる屈指の泣けるシーンでした。シナリオ全体を通して、泣けるシーンは最も多かったと思います。

 中学編は何と言ってもテレビ塔のシーンですね。家族だからこそ踏み出せない、それでも好きというとめどない想いをぶつけるシーンで、BGMに『雪の音色』とここは泣けました。先に言ってしまいますが、このテレビ塔のときは『雪の音色』の踏み出せない関係性だったのが最後には『Sweet Wish』の距離になっているってのがいいですね。

 学園編では雪月のパティシエールになる夢のために本格的にお菓子作りと始めました。雪月の実父が仕事中に倒れてなくなってしまい、優子さんがお菓子を見ると悲しみを思い出してしまうと思い、優子さんには秘密にしながら料理部でお菓子を作っていきました。しかし、クリスマスにイベントでケーキを売り出すことになって、そこで思い出の中にあるブッシュドノエルを作り、お母さんにパティシエールになる夢を話しました。ここは本当に涙がボロボロと出てきて止まりませんでした。銀はる全体、モブも含めてみんな優しい世界なのですが、ここの優子さんのシーンは本当に優しさに満ちあふれていました。

 学園編があまりにもよく、アフター編はちょっとだけ失速感がありました。とはいえ、雪兎や雛多に支えられながらパティシエールとして一歩一歩成長していくところは普通に楽しめました。

 

 椛に関しては、中学編の共通シナリオ部分でいきなりガツンときました。別のヒロインにフラグが建っている場合、同級生で気恥ずかしいから「名白さん」呼びのままなのですが、椛√に入る場合は「椛ちゃん」に変わります。また、さらに物語が進んでいくと「椛」に変わります。この呼称の変化ってちょっとしたことなんですけど、他のシナリオでずっと椛だけが名字呼びだったからこそ、このちょっとした変化にやられました笑。

 学園編に関しては、朱音の登場で一気に面白さが増しました。椛、朱音、雪兎は同級生で3年間かけて一つの目標に向かっていくという形になっており、最も部活を活かしたシナリオになっていました。このシナリオに関して、椛はてっきり演者としての夢を追うのかと思っていましたが、まさかの脚本に挑戦することになりました。もちろん、部で役者としても舞台に立ちますが、他のシナリオでは前に出ていく仕事に就いていたてそう思いこんでいたので脚本ってのは意外でした。

 アフター編では朱音の立ち上げた劇団に舞台には立たずに脚本家として参加することになりました。椛ルートについては、エンディング後のエピローグがよかったです。『夢の季節へ』はどのシナリオでも使われる挿入歌ですが、このエピローグで椛ルートにめちゃくちゃ合っている曲だなって思いました。

 椛√に関してはFDだしてほしーって思いました。つか全部出してほしい。SSでいいから新たな銀はる成分をください。

 

雛多

 雛多は他のシナリオでも見せ場が多く、特に雪月√では大活躍でした。しかし、雛多√は、主人公も雛多もどんな夢にむかっていくのか未知数な部分が多く、シナリオについては全く予想のつかないままでした。

 中学編では、捨て犬のハルと出会い、新見家の新たな一員となりました。また、雛多はたくさんの夢があり、主人公の助けを借りながらいろいろなことに挑戦していきました。

 学園編では飼育部に入って阿久津先生との出会いがありました。雛多、ハル、阿久津先生との関わりの中で、雪兎は動物に関する仕事につくことが目標となりました。

 ここまでは、クリア後に思い返すと、学園編までは長い下準備だったんだなあって思います。なのであえてあっさりめに書いています。ここまではイチャラブやハルとの生活を楽しみましょう。

 そして、アフター編では雪兎は獣医となりました。雛多の夢と挑戦してきたことが、ここで大きく花開きました。雪兎の獣医という仕事と、雛多の夢が少しずつ交わり、同じ夢になっていく構成はよくできていました。中学編、学園編で雛多が挑戦してきたことが、どれも動物とつながっていくのはおみごとでした。

 雛多√のエンディングの『ヒマワリ』は雛多√と関係なしに名曲です。しかし、ギャルゲの曲はやはりシナリオと合わさったときにさらに深みを増します。スタッフロールが流れている間、改めて雛多のための曲なんだなってしみじみと思いました。銀はると関係なく聴いてほしい曲ですが、この雛多√をやってさらに好きになって欲しいです。

 

瑞羽

 どのルートでも瑞羽はメダルにすらてが届かずにいたので、このシナリオで金メダルを取るってのは想像に難くなかったです。しかし、メダル獲得までにどのようなシナリオなのか、メダルを取るシーンはどのように表現するのかはわからなかったのでかなり楽しめました。

 瑞羽√は攻略順のときに述べたように、非常に完成度の高いシナリオでした。その要因は2つあると思っています。

 まずは、アリサの存在です。友人であり、ライバルでもある。ありきたりではありますが王道はいいものです。ただ「金メダル獲得」という目標だけでは物足りなかった部分に、明確な超えるべき壁としての存在はシナリオで重要なスパイスとなっていました。

 次に、幼馴染属性というアドバンテージです。多くのラブコメでは負け属性になりがちですが、小説や漫画と異なり攻略対象が複数作れるギャルゲではかなり強い属性だと思います。この銀はるにおいても幼馴染属性がこれでもかってくらい活用されていました。他のヒロインは、主人公が中学生になってから出会い、そこから10年の物語です。しかし、瑞羽に関しては幼稚園のときに出会っており、途中離れてしまった期間があるとは言え、主人公と20年の物語となっています。雪兎の両親が離婚するより前から知っていて、それがきっかけで失われてしまった本来の雪兎の笑顔を取り戻すために「金メダルを見せてあげる」という約束をし、そのために頑張っていました。その約束をした時は失意の底にいて忘れてしまっていました。2人の距離が再び近づき、この約束を思い出した時から二人三脚でその夢を追っていきました。この幼馴染ならではのシナリオがとても良かったですね。

 他にも、二人で聴いた曲のBGMだったり、他のシナリオでは見せなかった瑞羽の弱さと強さ……と見所は無数にあります。その中でもエンディングの入りは「おお!」って思いました。メダルを取る時のスケートの描写はどうするのかと思っていましたが、こう来たかーってなりました。フィギュアスケートだったのも相まって、エンディングにこの演出を被せてきたのはずるいですね。「女神の一線」と歩んできた軌跡が表現されていて、瑞羽の氷上で舞う姿を想像しながら魅入ってしまいました。そして、最後に金メダルを獲得した笑顔の瑞羽はもう最強に最高でした。

 正直、瑞羽以外のヒロインは雪兎がいなくてもそれぞれの夢を叶えていけています。しかし、瑞羽はこのルート以外ではメダルという明確な目標にたどり着くことはできませんでした。どのシナリオでも瑞羽は怪我しており、その後復帰をしているもの、メダリストはなれませんでした。怪我をしたときの雪兎の存在はもちろん重要でした。しかしそれ以上に、最初に金メダルを獲ると決めたのは雪兎のためでしたので、このシナリオを読んだ後に他のシナリオで怪我の苦しみを隠し、必死に雪兎を姉として支えようとする瑞羽は多分直視できないと思います。ですので、最後にこのシナリオをやって良かったと思いました。

 

シナリオまとめ

 どのヒロインもいくつもの季節を巡って、それぞれの夢に向かっていくシナリオは非常に読み応えがありました。何よりも、登場人物みんな優しく幸せに溢れていました。冬が中心ではありますが、春夏秋冬さまざまな季節のイベントがあり、たくさんの思い出を作っていき、結婚という一つのゴールに辿り着いた時には泣きゲーとは違った幸せ、嬉しさに満ち溢れた涙が出ました。

 ここまでいいところばかり書いてきましたが、ただ一点残念に思った点もあります。それは、最初から最後まで一緒にいる同性の友人キャラが不在であることです。ルートに入らなかったヒロインが友人ポジに収まったり、個別ルートに入ってから登場ということはありましたが、主人公が相談したり馬鹿やったりする友人が残念ながらいませんでした。ヒロイン側には他のヒロインがいたように、雪兎くん側にもそんなキャラが誰かしらいてくれたら嬉しかったです。そこだけが少し物足りなかったです。

 

シナリオ以外

音楽

 この銀はるにおいて評価したいところは、やはり音楽です。各ヒロインにテーマソングとエンディングソングが用意されていて、それに加えてオープニングと挿入歌もあり、合計12曲と豪華な構成です。いずれの曲もシナリオと非常にマッチしてますし、なんならシナリオ無しでも十分にいい曲ばかりです。とりあえず歌を聴いてもらい、気に入った曲があればそのれがどんな場面で使われているか、どんなシナリオなのかを読んでほしいです。

 また、BGMはピアノ基調の優しい曲が多く、シナリオに優しく彩りを与えてくれていました。BGMがいいとそれだけで嬉しいのに、印象的なシーンで印象的なBGMはもうたまりませんね。(分社化しましたが)Keyと同じくVisual Artsなわけですし、曲を売り出してほしいですね。今回はたまたまサウンドトラックを手に入れられましたが、他の作品やアレンジ版もほしいのでぜひ!(本音:Resonance tone売ってくれ)

 

演出

 演出面では、エンディングの入りからエピローグまでの流れが特に良かったです。

 先に触れていますが、瑞羽√は特に素晴らしいです。他にも、ベスリーはCGを一切使わずに歌詞に合わせてシナリオを振り返る演出、雛多の足跡で時間の積み重ねを思い起こさせる演出、椛の台本のように場面を振り返る演出面、雪月の作ってきたお菓子を出す演出と、シナリオに合わせてムービーが作られていました。エンディングムービーでシナリオを振り返ったあと、エピローグで改めてこれからも2人の幸せな物語は続いていくことを見せてくれました。欲を言えば銀色、遥かのさらなる先が見たかったですね。今からでもぜひFDを!!

 

グラフィック

 これに関しては文句なしに素晴らしいです。豊富な立ち絵、美麗な塗り、印象的なCG何をとっても良かったです。全部良かったからこれ以上書くこともない笑。

 

総括

 銀はるも月かなや(未プレイですが)星織ユメミライのように全年齢版移植をしてより多くの人にやってもらえるようにしてほしい反面、エロゲだからこその魅力を感じてほしい気持ちもあります。もはや、シナリオとは関係なく曲をとにかく聴いてほしい。美少女ゲーム界は名曲で溢れかえっていますが、初回版限定でアーティストのアルバムに収録されない限り手に入らなかったり、絶盤になっててプレミアがつきすぎて手に入らないことも多いです。しかし、この銀はるはボーカルアルバムがDL版であれば手軽に手に入り、さまざまなアーティストが歌っている名曲盤として買って損無しです。そして、そこからぜひシナリオに興味を持ってもらえると嬉しいです。